アートを通して自分のことをもっと知りたい方
アートは、意識的に表現したものだけではなく、自分の中から出た普段意識しない無意識層のイメージが象徴的な形になって現れたものがあります。
無意識は自分の中にあるもの、思い出すことのない経験や感情、臓器や細胞、言葉にできないぼんやりとしたもの、空気のように当然だと思っている社会全体の普遍的なルール、心身のリズム、信念、思い込み、神話など、幅広くあります。
アートセラピーの中で、色々な画材・素材の刺激と、セラピストや環境・外部からの刺激は、人間の要求・指向・希望を生み出し、身体が動きます。
そして何気なく描いたもの、作ったアートの中に、意識しなかった形が現れ、描いた本人がハッと驚かされます。さらに、じっと自分のアートと対話をすることで、閃き、メッセージを受け取ることがあります。
なくても何かを感じるかもしれません。忘れていた感情や記憶を思い出すこともあります。子どもの様に無邪気に遊んで描くことで、普段眠っていた記憶の澱の中から自分を見つけることもあります。
他にもぼんやりとした記憶、曖昧な感情、すっきりしない気持ちは、言葉に置き換えにくく、分かりにくいものです。
これらはアートによって見える形となって、自分を理解することができます。その日に理解できなかったとしても、アートは残るので、後日見直してみて、振り返ることができます。
自分は何をしたらいいのか、ぼんやりとした未来のビジョンもアートセラピーで探すこともできます。
そして、ビジョンアートは実現します。眉唾ものに聞こえるかもしれませんが、アートセラピーで表現し、認知することで、人間のよりよく生きようとする指向性がそのビジョンに近づこうと意識的にも無意識的にも作用するからです。
アートによって、無意識のビジョンが意識に上ることで、選択肢が見えてきます。一つを選択すれば、知らず知らずして、次のもう一つの行動へ進んでいきます。
一歩踏み出せれば、後は自然に歩き出します。その一歩にアートセラピーがお手伝いできると幸いです。
以前、私もことごとくお付き合いのあったギャラリーがなくなって、どうしようかと悩んでいた時、バイトをしようかと思っていたお店の方に、面接の前に将来のビジョンを描いて持ってきてくださいと言われました。
当時はアートセラピーも知らなかったのですが、すごく夢中になって絵を描きました。とことん自分を見つめ、居心地のいい世界を夢想しました。
描いてみると、そのお店でバイトすることが自分の将来に繋がらないことも見えてきました。どう私が動けばお店といい関係が繋がるのかもわかりました。
結局、そこのバイトには入らなかったのですが、お店で絵の展示をすることができ、望んでいた畑が舞い込み、仲間ができ、アトリエが現れ、アートと人をつなげるアートセラピーに繋がりました。お店の方には感謝しています。今も夢を繋ぎ、広げているところです。
アートをすることで、嫌なことを思い出す方もいます。過去の嫌な感情や思いに向き合いたくない方もいるでしょう。そういう方はアートセラピーによるストレス発散でもいいのです。
アートセラピストの元で、思い出した嫌な感情をアートで出し、安全に処理しましょう。無理に自己開示する必要はありませんし、セラピストも描き手が望んでいないことは望んでいません。
アートセラピーの安全な環境の中で出し、溜め込まれた想いやストレスを吐き出すことで、心身のバランスをもたらします。